1998年11月27〜28日、「_STOP子ども買春・子どもポルノ・人身売買_ ユースフォーラム1998」が東京で開催された。2000年春開催予定のECPAT国際ユース会議への参加に向け、子どもたち自身が子どもの商業的性搾取に対して意見を表明し、行動してゆくことを目的とした今回のフォーラムには、日本各地から高校生8名、大学生9名の計17名が参加した(内、女性15名、男性2名)。以下に、若い参加者たちが、ワークショップ、見学、講演、発表などを通して子どもの性的搾取について学び、同じ関心をもつ仲間との交流を深めた二日間の様子を報告する。
27日午後7時、代々木オリンピックセンターの一室に、熊本、名古屋、東京、新潟の各地からやってきた参加者が集合した。なかには制服のまま教科書の入った鞄を抱えて、授業終了後、新幹線に飛び乗ってやってきた参加者もあった。ストップ子ども買春の会・大森と斎藤の司会で、まず開会の挨拶と二日間の会議への期待が述べられた後、昨春にフィリピンで開催された国際ECPATのワークショップの様子をスライドを交えながら報告した。その後、「タイムライン」(年表)を各自作成して自己紹介をし、「生まれてからこれまで、どんな時にどんなふうに子どもの性搾取の問題に関心をもってきたか」を紹介し合った。東南アジアへの旅行がきっかけでという大学生や、先生から紹介された本を読んでという高校生など、きっかけはさまざまながら、みな今回の会議に参加するにあたっての期待や意気込みにあふれていた。初対面の人たちの前でも物怖じせず、目をきらきらさせて自分の言葉で語る参加者の姿が印象深かった。
休憩の後、それぞれに書いて用意してきた模造紙を張り出して発表があった。名古屋インターアクトクラブからの参加者は、この問題について初めて知って疑問に感じたことや考えたことを発表した。また新潟の敬和学園高校からの参加者は、学校で子どもの商業的性搾取についてアンケートを取り、120名から寄せられた回答を紹介した。
この日の夜は、公式のプログラムを一旦終えた後、希望者はエクスポージャー(子どもポルノの現状を視察)に参加した。エクスポージャーをこれまで何度か実践してきた学生YMCAのメンバーによる道案内で、少人数に分かれて夜の池袋を歩き、アダルトショップ等でどんなビデオが売られているのかを見て、また実際に人身売買の犠牲になっている女性たちが街角に立っているようなエリアを歩いた。普段は見ることのない夜の街の様子は、参加者にとってインパクトのあるものであったようだ。
二日目の28日は、まず最初に全員に紙を配り、今の気持ちを木に描いて表現し、意見交換を行った。それまでのプログラムやエクスポージャーをふまえて、今の気持ちを表現するとどのような木になるか、静かに紙に向かって振り返り、できあがった絵を説明し合うことでいろいろな感じ方を共有することができた。次にストップ子ども買春の会・宮本より、国際ECPATの活動や日本における子どもの商業的性搾取の現状について話を聞き、参加者からは日頃疑問に思っていたことなどについて質問が出された。
この後、午後にかけて会場を東京ウィメンズプラザに移し、この会議のメインである課題発見ワークショップが行われた。ここでは参加者は4人ずつのグループに分かれ、各グループにファシリテーター(進行役)としてスタッフが加わり、まず最初に「どんな時に子どもの商業的性搾取があると感じるか」を各自が付せん紙に書き出していった。「ピンクちらし」「援助交際という言葉」「マスコミの報道」「東南アジアへの旅行」などさまざまな言葉を書いた付せん紙を、グループで話し合っておおまかに分類しながら模造紙に貼り付けてゆき、できあがったものを見てさらに話し合いを行った。子どもの商業的性搾取について私たちを取り巻く情報の中には、悪い情報(子どもポルノなど)もあるが、よい情報(セックス・ツアーを告発するドキュメンタリー番組など)もあることや、子どもポルノ雑誌が発売されていることだけが問題なのではなく、それらを日本全国どこでも簡単に手に入れられるような流通経路が整っていることも大きな問題なのではないかなど、それぞれのグループから突っ込んだ指摘がなされた。
そのような現状認識をふまえて、次に「では私たちにできることは何か」を各グループで話し合い、発表した。「ユース会議の参加者として何をしてゆきたいか」「(28日夕方の)オープンフォーラムで何をしたいか」「自分として何をしてゆきたいか」「地域で学校で何をしてゆきたいか」の4つの質問に答える形でさまざまなアイディアが飛び出し、また今後の取り組みに向けての決意が述べられた。ここで、やってみたいことや伝えたいことなどが多く出されたので、それらを文章にまとめてユースによる宣言文を作ることにし、希望者8人がこの後、宣言文作りに参加した。他の参加者は、この二日間のプログラムの集大成として「未来の子どもたち」という題で大きな布にペンキで自由に絵を描いた。その後のオープンフォーラムで、参加者の一人はこの絵を次のように紹介した。「今書いてみて思うのは、この絵のテーマは一言で言うなら『楽しさ』なんじゃないかということです。子どもたちが楽しいなんていうのは、当たり前のことなんですけれども、例えば、子ども買春や子どもポルノ、性目的の人身売買などが横行している社会では、そうした当たり前のことが現実になり得ないんじゃないかなと、描いてみて改めて思います。僕たちの目的である、子ども買春・子どもポルノ・性目的の人身売買の阻止や、それらをなくしてゆくための運動の象徴だと思えるので、ぜひ見ておいてください。」
28日6時30分からのオープンフォーラムは、午後のプログラムに引き続き、東京ウィメンズプラザで開催された。ストップ子ども買春の会・中原の司会で、まず同・宮本から国際ECPATの活動の流れと日本国内での法制化への取り組みが紹介され、続いて宇佐美昌伸氏(清水澄子参議院議員秘書)が日本政府のこの問題への取り組みの遅れや衆議院に子ども買春法案を上程するまでの困難について説明された。もう一人のパネルである、子どもの性的虐待防止に取り組む「グループCAP」代表の安藤由紀さんは、子ども買春の問題は決して遠くのよその子どもの問題ではなく、日本において多くの子どもたちが現に性的虐待の被害にあっている実状を訴えられた。会場からは、子どもポルノの規制を求めるとき表現の自由についてどのように考えたらよいだろうか、という問題提起や、子どもの人権関連の団体内部においてさえも、子ども買春を自分たちの取り組むべき課題として、正面から捉えてゆくことがなかなか難しいという報告などがあり、ユースフォーラムの参加者も、大人たちの悩みや苦労に耳を傾けた。
ユースの側からは、二日間の議論の成果がつまった「ユース宣言文」が発表され、また参加者全員で作成した絵が紹介された。その他、各地の参加者が用意してきた模造紙のまとめや、課題発見のワークショップで作成したチャートなどを壁に掲示したところ、会場の人々から多くの関心が寄せられた。
あわただしいスケジュールの中で、密度の濃い二日間を過ごしたユースフォーラム参加者は、オープンフォーラム終了後も再びテーブルを囲んで、熱心に今後のユース・ネットワーク作りについてファシリテーターと共に話し合いを続けた。それぞれの地元に帰ったら、まず年内に学校で報告会をすること、そしてその報告会の様子を「ストップ子ども買春の会ニュースレター」に掲載する、ということで話はまとまり、遠くない日の再会を約束してそれぞれ帰路についた。
「ユースフォーラム参加者として何をしてゆきたいか」
◆ 参加者同士のネットワークを作ろう。この問題に取り組んでゆくと、困難なことも多いと思う。また勉強しなければいけないことも多いが、関心を継続してゆくのは簡単なことではない。あきらめないで頑張ってゆけるように、精神的にも経済的にも支え合えるような仲間になれたらいいと思う。
◆ せっかく日本各地から集まっているのだから、それぞれの地元で現状を調査して、情報交換をし合えたらよいと思う。他の国々でも(2000年の国際ユース会議に向けて)子どもたちが準備を進めているそうなので、そういう人たちともインターネット等を使ってつながりを作ってゆけるのではないか。
◆ ぜひまたこのようなユースフォーラムを開こう。次回はもっとたくさんの学校に呼びかけよう。
「(28日夕方の)オープンフォーラムで何をしたいか」
◆ 今回の話し合いを報告しよう。買われる子どもたちは私たちと同年代だし、買っている大人は聞きに来る人たちに年齢が近い。聞きに来る大人たちとの世代間交流のチャンスなので、お互い同じ年代の人たちにそういう生き方をしてほしくないということで、どんなふうに協力できるか考えよう。
◆ 子ども買春を止めさせる法律が何で簡単にできないのか教えてほしい。
◆ 議員(秘書)の人が来るので、国会議員の人たちは自分たちに何ができると考えていて、今すぐできることは何か教えてほしい。
◆ 子ども買春は犯罪だと教科書に載せて、その上で授業をしてほしい、と伝えたい。
◆ (日本には)大きな国としてもっと大きなアクションをとってほしい、と伝えたい。
「自分として何をしてゆきたいか」
◆ おみやげの「東京ばなな」を友達に配りながら、「東京に行ってきたんよー」というだけでなく、何をしに行って来たのか話そう。
◆ 学校のゼミやクラスで発表の機会があるときに、この問題を紹介しよう。
「地域で・学校で何をしてゆきたいか」
◆ 学校の図書館には、子ども買春に関する資料がほとんどなかった。帰ったら、こんな本を入れてください、と頼みにゆこう。
◆ 買春(かいしゅん)という言葉がまだまだ一般的になっていないので、広めてゆこう。例えば授業中にもし先生が「売春(ばいしゅん)」という表現を使ったら、「ちがいます!」と何が問題なのか説明しよう。
◆ 夫や恋人など、身近な人々の買春を「しかたがない」とあきらめてしまう女性の側にも問題があると思う。そういうふうに諦めてしまわないように女性の意識も高めてゆこう。
◆ 各地の自治体や政府の象徴にハガキを描いて、早く子ども買春を止めさせる条例や法律を作ってくれるように要求しよう。署名も集めよう。
◆ 旅行会社の人たち同士で会議を開いてもらって、セックスツアーや旅行先での子ども買春が犯罪だとしっかり認識してもらおう。そういうツアーを作ったり、案内したりするのをやめてもらう。
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私たちはユースフォーラムに参加して、同じテーマに関心を持ち、取り組みをしている人達に出会い、子どもへの商業的性搾取の現状を学びました。そこで知らないことの恐ろしさを知り、また事実を知った後、衝撃を受け、怒りや悲しみを感じました。このままで終わらせないために、私たちはどうしたらいいのか、何ができるのか、という認識のもと、子どもへの商業的性搾取は許せないという気持ちを、ここに宣言します。
以下のことを私たちは要請したいと考えます。
日本人による子ども買春や子どもポルノの製造・販売が幅広く行われていますが、日本にはそれを取り締まる法律がまだありません。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」を早く制定してください。なぜ、最優先の問題として取り上げてくれないのでしょうか。こうして私たちが話している間にも、多くの子どもたちが日本人によって傷つけられています。一刻も早い制定を望みます。子どもの立場になって考えてください。子どもの権利条約34条にも書かれています。
1. 被害を受けた子どもへのケアをきちんとするようにしてください。
2. メディアでの被害者の子どものプライバシーの保護が守られるようにしてください。
3. 子どもへの性的搾取をする加害者への取り締まりや処罰を厳しくしてください。
4. インターネット上での子どもポルノも禁止してください。
5. 子どもにも大人にもわかるような広報を必ずしてください。
子どもを使ったポルノは載せないでください。それは犯罪だと読者に伝えてください。写される子どもは、ものではないのです。本屋さんやコンビニエンスストア等、販売に関わる方は、そうした本や雑誌を売らないでください。本を買わない人でも目に入り、悪影響になります。まずは、この問題をアピールしてください。
観光地でお客さんが買春をするときには、紹介をしないでください。はっきり「犯罪です」と止めてください。観光客用のパンフレットには、きちんとこの問題について書いてください。
無意味な情報を流すぐらいなら、人気のある俳優などを使って、社会の問題をみんなに考えてもらうドラマを作ってください。もし、ニュースやドキュメンタリーや新聞等で実態を報道する際には、子どもたちに対して最大の配慮を行ってください。子どもたちは被害者です。全国のみんなを引きつけ、考えさせていく力を、報道関係のあなた方はもっているはずです。
私たちは、この問題や男女の性の問題、性差に関する問題について、学校で勉強することができませんでした。
ぜひ、これからの小学生、中学生、高校生にはきちんとした性の教育を行ってください。私たちは、私たちも意見を言い、教科書の上のみに左右されたくありません。先生しっかりしてください。その上で、アジアやアフリカをはじめとした世界各国、そして日本国内で行われている、この子どもの問題を教えてください。
日本全国のみなさまへ
私たちは、二日間ユースフォーラムで学んだことを、友達、家族、学校、地域などに伝えていきたいと思います。
みなさまも、このような問題をしっかりとした犯罪として捉え、家族や職場など身近なところから伝えていってください。そして、このような一人一人の行動が、大きな社会変化をもたらすことを期待します。
私たちは一人一人の小さな力を寄せあって、以下のことを行っていこうと思っています。
ユースフォーラムに参加した人達のネットワーク作りを始めます。
●各地域間で情報収集、情報交換をします。
●私たちは地域に戻り、仲間作りを始めます。
●ハガキやe-mailでの要請活動を具体的に考えています。
親子間、夫婦間、恋人同士など身近な問題として考えてください。日本を含めた世界各国で苦しみを受けているのは、私たちと同じ年頃の子どもたちです。
1998年11月28日
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