本日、法律案の審議に当たり、子ども買春・子どもポルノ等子どもへの性的搾取・虐待の根絶のために働いてきたNGOとして、ここで意見を述べさせていただけます。 ことを感謝申し上げます。
現在問題となっている、いわゆる「出会い系サイト」には様々なものがありますが、緊急の対処を必要としているのは、「交際」、具体的には「性交等の相手探しを目的とするもの」です。これらのサイトは携帯電話などから手軽に利用できる反面、犯罪が急増しており、多数の子どもたちが巻き込まれています。特に、事件の多くを占めるのは子どもかいしゅん買春です。このような「出会い系サイト」に係わる犯罪から子どもを保護するために、政府が今国会に法案を提出されたことを評価いたします。その上で、内容につきましては、いくつか大きな問題点があると考えます。
第一に、「出会い系サイト」で子どもを誘った者を処罰するとしていますが、同時に、勧誘の書き込みをした子どもに対しても罰則を課しています。これは子ども買春の被害者に対して懲罰的アプローチを取らないとする国際合意(ストックホルム宣言・行動計画)に反することです。国際ECPATとしても、この子ども処罰規定を問題視しております
今後、国連などの場で問題とされる可能性が高いことも申し上げさせていただきます。 子ども処罰の背景には、子ども買春事件の9割は子どもからの勧誘がきっかけであるという統計がありますが、その認識には重大な誤りがあります。サイト利用者の大半は成人男性であり、彼らは子どもの書き込みを待っていると言えます。
確かに、一旦子どもが書き込みをしてしまえば、そこから巻き込まれていってしまう危険性が高くなるかもしれません。しかし、だからといって「子どもの書き込みを罰する」というのは本末転倒です。「子どもを罰する」ことによって、相対的に、子どもを性的対象とする買春者や虐待者の責任と犯罪性を弱め、正当化の論理を与えてしまう、ということを認識すべきです。昨年11月に兵庫県で起きた35歳中学教師による12歳の少女の監禁致死事件は、ひとつの象徴的なケースとなりました。その男は少女に手錠をかけてワゴン車に監禁し、そこから逃げようとして少女は死に至らしめられた訳ですが、判決の中で裁判長は「テレクラを利用した少女にも多少の落ち度があった」と述べています。99年全会派一致で成立した「児童買春・児童ポルノ等禁止法」の趣旨が、法執行現場では実体化されていないという現実を示しています。
同時に、子どもに対して、自発的、積極的に買売春に関与しているという印象が日本社会に広まってしまっています。しかしながら、事実はどうなのでしょうか。ひやかしや暇つぶしで書き込みをした子どもが巻き込まれていく場合もあれば、家庭内の(性)虐待や学校での疎外、いじめなどで傷つき、相談相手ややさしくしてくれる相手が欲しくて、それを「出会い系サイト」に求めてしまう子どもたちもいます。また、一方的に送られてくる迷惑メールや、ティーン雑誌に繰り返し登場する記事・広告などで‘楽しげ’な印象をもち、サイトを訪れる場合も多々あるのです。テレクラ被害が問題となった当時も、子どもの雑誌にテレクラ広告が載っていたことが指摘されました。子どもの性的搾取に直結したマスコミ情報の実態と影響についても、今回、改
めて考え対処する必要があるのではないでしょうか。
責任を問われるべきは子どもではなく、子どもの状況に付け込む者です。その点法律案では、子どもを直接誘う者や「出会い系」サイト運営者に対する罰則・規制を設けており、一定の評価ができます。但し、そうした「出会い系」サイト運営者や利用者にサービスを提供し、子どもにとっても利用の入口となっている携帯電話会社やプロバイダ等の事業者にも、悪質なサイトを排除したり、子どもの利用を防止したりする大きな責任があるはずですが、そうした事業者に対しては、拘束力のない「努力義務」に止まっています。
「通信の秘密」がその理由であると説明されていますが、「子どもの最善の利益」から見た場合、考え方の優先順位に問題があると言わざるを得ません。「サイバー犯罪条約」を提示した欧州では、英国、フランス、アイルランド等のISP(インターネットサービス・プロバイダー)協会が子どもへの性的搾取を防止するため、企業の社会的責任として積極的な協力を実践しています。例えば英国では、自主規制と共同規制(co-regulation)を組み合わせたアプローチを採用し、官庁、法執行機関、ISP、コンピュータ製造業者などの官民の関係者が参加するタスク・フォースを組織して、法的・非法的両面で取り組みを進めています。
他方、子どもたちに対しても、このまま放っておいていいということでは決してありません。今年3月に東京で開催された世界初の「モバイルインターネットと子どもに関する国際ワークショップ」で日本人高校生が訴えたことは、“1日20から30件ものスパムメールが入り、ワン切りもある。出会い系と分かるものもあるが、分からないものもある。趣味のサイトと思って話をしていたら、途中から性的な話になっていった。中高生用ファッション誌の中に出会い系サイトを勧める文章が載っている。とにかく野放し状態であり、子どもは出会い系サイトが自分たちにどう影響を与えているかを教わっていない。”ということでした。2002年度から公立小中高にインターネット接続がなされましたが、ハード面の整備と車の両輪でなければならないインターネットの安全教育、インターネットリテラシーが実施されておらず、学校カリキュラムの中に必須科目として入れる必要があります。
また、「出会い系サイト」にまつわる危険やインターネットの安全な利用法を学校や家庭で教えることはもちろん、第三者機関として子どもが気軽に利用できる相談窓口やカウンセリングの場を設けることが是非必要であり、この点については、予算及び人員措置が確実に担保される「義務」規定にしていただきたく思います。99年「児童買春・児童ポルノ等禁止法」において防止教育の条項が努力義務のみであり、効果的な執行が行われなかったことが、出会い系サイトに係る被害状況をここまで深刻化させた一因でもあると考えます。
以上の点、また参考資料の中で述べさせていただきました諸点を含めて、何とぞ十分なご審議の上、日本政府が既に批准した『子どもの権利条約』及び批准に向け準備を進めている選択議定書の目的である「子どもの最善の利益」に立った法律内容としてくださいますようお願い申し上げます。
最後に、こうした問題を解決していくためには、関係事業者や行政機関のみならず、何よりも親や教育関係者、そしてマスコミ、市民が意識を高め、子どもにとって安全なインターネット環境を築いていくべきであると考え、ECPAT/STOPとしてもすべてのセクターと協力しつつ努力を積み重ねていく所存です。
以上で意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
(ECPAT/ストップ子ども買春の会)
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